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クレーム千夜一夜 < 第64話 「倒れた男」の話  その2>

電車内でズルズルと崩れ落ちるように倒れた男性の後頭部が床に着く寸前に、私は左の手のひらで受けたのでした。自分でも驚くほどの機敏な行動でした。暫く目をつぶって床に横たわっていた男性は、数秒後に目を開けて「あなたはなぜ押さえつけているのですか?離してください、止めてください」と言って強引に立ち上がったのですが、数秒後に先ほどと同様に崩れ落ちて行ったのです。今度は後頭部を床に「ガン」と打ち付けてしまいました。拙い、と思った私は、目をつぶった男性の頭を低くしたまま表情を観察しましたが、特に変化はありませんでした。顔を近づけて「話が出来ますか?」と何度か声掛けをし、3度目くらいに男性はまたも目を開けたのです。そして今度も立ち上がろうとするのです。私は男性の身体を制して「今は立ち上がってはいけません。間もなく担架が来るのでこのまま静かにしていましょう」と伝えましたが「離してください、大丈夫だから」と男性は自分の身体を起こそうとしています。私は「先ほども大丈夫だと言って立ち上がったのですが、気を失って倒れてしまったのですよ。分りますか?駅員さんが担架を持ってきますから、それまで静かにしていましょう」と伝えたのですが相変わらず「何をするのですかあなたは、止めてください」と聴く耳を持ちません。困ったなあ、と思っていたときでした。45名の駅員がやってきてこの男性を担架に乗せて事務所に連れて行きました。ああ、良かった。ホッとした気持ちでした。

それにしても駅員さんが複数人来てくれましたが、今回の状況の詳細を私に聴こうとする駅員さんは「ひとり」もいませんでした。救急隊員や医師に引き継ぐ際に、詳細を伝えた方が治療に役立つのでは?まあいいか。それにしてもあのときは困ったなあ。「大丈夫、と言っているんだから、もう離してあげたら?」と口を出してきた70代の女性です。緊張時に私と違う見解をわざわざ伝えに来たのです。気持ちは分りますけれど・・・ね。「小さな親切、大きなお世話」という言葉を思い出しました。あれ?よく考えて見るとそれは私の行動にも言えることかしら・・・?

 

 

2024.12.10
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