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クレーム千夜一夜 < 第63話 「倒れた男」の話 その1>
数日前の10時頃の電車内での出来事です。それほど混んでいない電車内で座っていた私は車内の様子を見ていました。横浜駅に着く頃でした。出
入口ドア付近の支柱に掴まっていた70代の男性が、スローモーションのように両手で支柱を掴んだままズルズルと落ちていきました。床にお尻が着いたと同時にゆっくりと後方に倒れたのです。私は、滑り込むように男性の後頭部を手のひらで受けました。身体は床に仰向けになり目をつぶっていました。私は顔を近づけて「大丈夫ですか?話が出来ますか?」と呼び掛けたのですが反応はありません。10~20秒ほど経つと、男性が目を開けて「えっ?なに?」と言いながら左手で支柱を掴んで起き上がろうとしたので私は「起きてはいけません。少しこのままでいましょう」と制止しましたが、男性は言うことを聞かず「離してください、何をするんですかあなたは!」と怒り出したのです。そばにいた70代の女性が「大丈夫、と言っているんだから、もう離してあげたら?」と言ってきました。私は、「ありがとうございます、でも今は安静にしておきましょう」と身体を押さえていました。男性は強引に立ち上がろうとしています。「離してください、何で押さえるんですか」と抗議するように言ってきたので、その勢いに負けてしまった私は手を離し横で見守りました。男性は自力で支柱につかまりながら立ち上がりましたが、2~3秒後に再度、ズルズルと床に落ちていきました。今度は後頭部を床に「ガン」と打ち付けてしまい、私は慌てて男性に「大丈夫ですか?お話が出来ますか?」と声かけしましたが、目をつぶったままでした。丁度、電車は横浜駅に着きドアが開き、床の男性を見ながら数名が乗り降りしていました。私は回りの人たちに「駅員を呼んでください」と声掛けしましたが誰も動く気配はありません。救急法で以前習ったことを思い出し「あなた、担架を運ぶよう駅員にお願いしてください」と失礼ながらも「あなたが動くんですよ」と指をさして示しました。動いてくれたようです。
【次回に続きます】