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クレーム千夜一夜 < 第61話 「平和を感じた一瞬」の話>

私が利用するバス停には、3人掛けのベンチがあります。そこには80代のご婦人が座っていて私は隣に座りました。23分後に、やはり80代のご婦人がバス停に近づいてきました。私はすぐに立ち、席をご婦人に譲りました。お礼を言いながらそのご婦人は座りました。80代の女性同士は、隣り合わせになったと同時に会話を始めました。見知らぬ同士なのにすごいですね。ご老人、特にご婦人同士はすぐに会話が弾みます。私の前で、先に座っていたご婦人(Aさんとしましょう)が「私は今、○○病院に行ってきたんですよ。膝が痛くてね。歳を取ると身体中痛くなって」と話をすると、後からのご婦人(Bさんとしましょう)は「私は右の足首です。ずっと通院してますが良くならないんですよ」と応じました。Aさんが「どちらへ?」と尋ねると、Bさんはその質問には答えず「68系統のバスに乗るんです」と返しました。Aさんは「ああ、68系統ね、68系統は本数が少ないので結構待ちますよ。私は102系統に乗りますが頻繁に来るんですよ」Bさんは「そうですか」と返しました。するとAさんがさらに「68系統のバスは橫浜駅西口まで行くんですが、102系統のバスは橫浜駅東口に行くんです」と終点が違うことを伝えました。Bさんはそれに合わせるように「そうですか」と。その後、34分、息子や孫の話などで会話は盛り上がっていました。そのときでした、68系統のバスが着いたのです。お喋りに夢中のAさんBさんは気付きません。私が「68系統のバスが来ましたよ」と伝えると「あらそうなの、ありがとう」と言いながらBさんだけが68系統のバスに乗り込みました。ここから4つ目のバス停で降りる私も68系統のバスに乗りました。Bさんは前方の席に座っています。4つ目のバス停に到着した私は立ち上がり出口に向かうと、何とBさんも下車しているではないですか。えっ?橫浜駅西口方面に行くのでは?と疑問に感じましたが、バス停を降りたBさんは、いつもの道なのでしょう、足取り軽くドンドン遠ざかっていきました。それにしてもご老人同士の会話は、内容は関係ないのですね。

2024.10.15
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