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クレーム千夜一夜 < 第56話 「折角出会った縁なのに・・・」の話 >

猛暑が続く先日の出来事です。市営地下鉄のエレベーターで地階の改札口フロアに向かうために「閉じる」ボタンを押そうとしたときでした。4~5メートル先にベビーカーを押した3人連れの親子がこちらに向かって歩いて来ます。若いお母さんは赤ちゃんを抱っこして空のベビーカーを押しています。隣には3~4歳の女の子がお手伝いなのか荷物を持っていました。慌てて私は「開くボタン」を押して親子連れを待ちました。

親子がエレベーターに乗って来た時には、3~4歳の女の子が私に微笑んでいるようにも感じました。親子は無事にエレベーターに乗れたので私は「閉めるボタン」を押すと、静かにエレベーターは地階に降りていきました。地階に着いて扉が開き、私は当然のように「開けるボタン」を押しながら母親の方に振り向き「どうぞ・・・」とソフトなトーンで伝えました。母親の会釈でもあるのかなあ、とほのかな期待をしていたのですが返ってきた反応は全く違っていました。「大丈夫です」という凛とした声で強い意志を感じました。「え~っ?」私の心は大混乱です。もう一度「いやいやどうぞ・・・」と言った方が良いのか?一瞬、悩みましたが、再度同じことを言ったらトラブルになりそうだと感じた私は、すぅ~っと、何事もなかったかのようにエレベーターを出ていきました。今思うと、もう一度「どうぞ」と言った方が良かったのか?でも、「大丈夫です」の声には頑とした響きを感じたのです。まるで「私は私で頑張ってやっているのですから余計な親切はかえって迷惑です」と感じてしまうような声と顔だったような気がしたからです。これで良かったのだ、と私は無理矢理に自分の心を押さえ込みました。でも、ちょっとくらい他人に頼っても良いのになあ。そして感謝の言葉を述べれば。そして別の機会に他人から頼られたらお世話して差し上げる。その時にその人から感謝の言葉を掛けられたらどんなに心地良いものなのかに気付くのになあ。

2024.08.10
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