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クレーム千夜一夜   <第34夜 純朴そうな男>

前回の『クレーム千夜一夜』でも書いたが、我が家の固定電話に外からかかってくることはほとんどない。しかし、その日の朝は突然、固定電話が鳴り響いた。丁度仕事をしている最中だった私だが、仕方なく受話器をとってみました。

「はい、カワイです」と元気よく、愛想良く出ると、受話器の向こうからは男性の声で「あの・・・、北海道札幌の★※&商事と申します。」商事という単語は聞こえたが、私には★※&という会社名はよく聞き取れなかった。すると、男性は「以前、札幌に来てお土産を買ってくれたお客様の名簿から電話を掛けています」と話を続けてきた。えっ?札幌?行ったことはないのに・・・。いや、そんなことないか、42年前に私たち夫婦が新婚旅行に行った際に寄って宿泊したのが札幌だったな。でも、札幌でお土産なんか買ったかなあ?と頭の中で思い巡らせていると、男性は「コロナの影響で2年近く、海産物がまったく売れないのです。新鮮でお安く提供できる魚、カニ、ホタテ、イクラ等の海産物が在庫として残ってしまっています。以前、札幌に来ていただいたお客様に何とか買っていただきたいと思って、電話をいたしました。とても新鮮でお買い得なものばかりです。何とかご協力をいただけないでしょうか?」と『訛り』を少し感じさせるような、純朴そうな声で話をしてきました。しかも、声のトーンはいかにも困っているかのような弱々しい声でした。

そうだよなあ、今年、昨年と2年続きでコロナ禍が続き、人出がなくなり観光客が激減したからなあ。そのおかげで商売を営んでいる人たちは大変なご苦労をしているんだろうなと同情心が芽生えたのですが、同時に、私の頭の中では別な記憶が浮かんできました。

あっ、これは危ないぞ。最近、消費者が引っかかってしまう詐欺商法だ。「新鮮だ、お買い得だ」と言っておきながら、実物を見せることなく、代金を銀行振込みさせて、結局、電話の内容とはまったく違う商品を送りつけてくる商法に違いない。断らなければいけない、という思いが浮かんできました。とはいえ、詐欺だと断定する証拠はありません。断り方に気をつけないといけない、失礼の無いように断ろう、と丁寧に丁重に断りの言葉を伝えることにしました。

「申し訳ないですね、うちの家族は全員、魚やカニが嫌いなものが多くて、すみませんが今回はお断りをしたいのですが・・・」と伝えようと思い「申し訳・・・」と口に出した途端に『ガチャ!』と電話が切れてしまいました。

それはないだろう、詐欺師にだって礼儀作法があるだろう。本物の詐欺師なら、話の途中で電話を切るなんてことはせずに「そうですかぁ、失礼いたしました。次の機会にはどうぞよろしくお願いいたします」くらい言うだろう。そのようなスキルを持っている本物の詐欺師だったら、次回、同じような電話をかけたときには、何人かの1人くらいは「今回はお願いします」と引っかかることもあるのに・・・。

変わり身の早さというか、買う気のない客と話をしても電話代が無駄だ、とばかりに効率的な勧誘を実践していたようでした。何とも後味の悪い電話でした。

2021.11.08
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