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クレーム千夜一夜 <第27夜 ウサギと亀>
「新型コロナウイルス感染症対策本部」本部長である安倍総理は昨日4月29日の国会予算委員会で野党の質問者から「現在の感染者数はどのくらいか」と尋ねられて、あたふたとしたことが話題になっています。質問に「今の、その、現時点で、今の感染者数というご質問はいただいてなくてですね」、「今しておられることについては質問の通告はされていないということはまず申し上げておきたいと思います。それはそうですよ、だって、こ、これに、これに、これに書いてないじゃないですか」と答えられない言い訳、他責的な言動が報道されています。確かに事前通告はなかったから『不意打ち』のような気がしないでもないのですが、一国の総理です。安倍総理は、新型コロナ感染の対策本部長ですよ。国内の総感染者数くらいさらっと答えられない姿を見てとてもがっかりしたのは私だけではありません。野党議員の「引っ掛け」という見方もありますが、何も、1の位まで正確な数字を求めているのではありません。1万4千人くらい、あるいは1万数千人という回答でよいのにもかかわらず、基本的な知識がないことにとてもがっかりしました。緊張感のない姿に失望しました。
緊急事態宣言が発出されたおかげで、家にいて国会中継をTVで見る機会が増えました。見ていると、国民がこんなに困窮している実態を安倍首相は心の底から理解しているのでしょうか?
国会中継をじっくりと見ていると、やり取りに緊張感が感じられません。「もうこれだけのことは計画して予算化しているんだから、今から予算の変更・修正などできませんよ。質問や提言は形だけは受けますが、あくまでも形だけですよ。」と見えてしまいます。だいたい、委員会で野党議員の質問に答弁している安倍総理の言葉があまりにも空疎・空虚であると感じています。まったく質問に答えていないのです。応えてもいないのです。
全く架空の話で国会のやり取りを再現してみましょう。
例えば、イソップ童話の「ウサギと亀」で説明してみましょう。
質問者:「ウサギと亀が競争した話はご存じのことでしょう。スタートと同時にウサギは圧倒的なスピードを活かして走ったために、亀をかなりの距離リードしたわけです。ゴール間際のウサギは、これは優勝間違いなしと確信してちょっと休んでいこうと居眠りをしたわけです。その間に、居眠りしているウサギを亀が追い越して先にゴールした話です。総理、ここでお尋ねします。ウサギはどういう理由で居眠りをしてしまったのですか?その理由を説明してください」
総理答弁:「え~、まあ、つまりですね、ウサギと亀が、競争をしたわけですが、委員のご質問にありますように、ウサギはとても足が速いんですね。亀はというと歩みがのろい動物の代表であることは委員もご存じのことだと思います。その対照的な2種類の動物が競争をしたわけですが、リードしていたウサギが居眠りをしている間に、亀がウサギを抜き去って優勝したということなのです。」
質問者:「いえいえ、そうではありません。ウサギが休んで居眠りした理由を尋ねているのです。どういう理由で休もうと考えたのかを尋ねているのです。質問の回答になっていません」
総理答弁:「ですから、ですからね、先ほど、説明したようにですね、ウサギがゴール前で眠ってしまったんですね。眠ってしまったから亀が追い越すことが出来た、ということでございます。どうして居眠りをしようと思ったのかについてはですね、今、専門家会議の委員の皆さんの提言を参考にしながら十分に検討していきたいと考えています。」
のような感じなのでしょうね。質問に端的に答えようとしていない、回りくどい必要としていない余計な文言をグダグダと述べながら、肝心な答えとは程遠い答弁をするのです。しかも、この言葉の中で「え~」「あ~」「う~」「ですからねですね~」という短い『うなり』が挟まり、結局文章に起こすと『この人、単語を並べているだけで、何を言っているのかよく分からない。質問の答えになっていない』ということになってしまうのです。「ヌカに釘」「のれんに腕押し」の答弁です。国民の知りたいことを背に質問していることに、真摯な答弁が出てこないのは本当に問題です。国民から信用・信頼をされなくなった人から、「緊急事態宣言」「自粛要請」などと押し付けられても素直に従えないのも納得できると思った国会中継でした。