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クレーム千夜一夜 <第16夜 ミスを挽回するためには誠意の倍返しを>
昨年の12月中旬に某保険会社のお客様相談室担当者からメールをいただいた。従業員を対象にクレーム対応セミナーを企画しているとのことだった。
セミナーの企画案と見積もりを提出して欲しい、という依頼だった。もちろん、私が講師に決定したわけではなく、他の講師とのコンペの結果、回答をするというものだった。
この保険会社に合うようなものを、と半日から一日かけて作成した。
翌日、礼を尽くした丁寧な挨拶文と企画案・見積書をメールで送付した。そのまま12月が過ぎ、新年を迎えてしまい、いつしか提案したことを忘れてしまった。1月の下旬に、企画案のことを思い出した。「どうしたかなあ?」と思いながらも、年末・年始は特に忙しいはずだから・・・と想像をしてもう少し返事を待つことにした。
2月末となり、さすがに私も「忘れられてしまったのかな・・・?他の講師で決まったのだろうな・・・」と諦め感を持った。しかし、12/20に企画案を送り、一流の保険会社さんから2カ月以上も音沙汰がないのもどうかしている。「何かを言わねば・・・」と思い、2/29の朝に、某保険会社のお客様相談室担当者に遠慮がちに「却下になったと思いますが、私の企画案はどうなりましたかね?」とメールを送った。さすがに、その日の夕方に担当者からメールが届いた。「予算が確保できなくなりました。申し訳ありませんが研修は中止となりました。」という内容だった。
あらまあ、随分サッパリしていること、予算が確保できなかったのなら仕方がないけど、私の問合せ前に中止の連絡が来るのが当然なのに・・・。だいたい、「申し訳ありませんが」とは書いてあるけれど、この担当者は「本当に」申し訳ないと思っているのだろうか?面識のない講師に企画案と見積りを出させて、「中止になりました」という能天気のメール回答でいいの?私に多大な迷惑をかけた、かけた時間と労力が無駄になってしまった、ということを心の底から感じているの?感じているのであれば「これは大変だ、丁重にお詫びをしないといけない」という誠意を相手に感じさせるようなお詫びをしなくてはいけないのでは?お詫びの方法も、メールではなく、少なくとも電話で直接お詫びをする、というのがお客様相談室担当者の発想だろう。
この返事にはあきれたけれど、各企業のお客様相談室の従事者の応対レベルを向上させることが私の仕事、という使命感を持っている伝道師である私は、余計なお節介と感じられることを承知しながらこの担当者にメールを送った。「研修が出来なくなってしまったことは仕方がないことですが、その連絡が来なかったことには違和感があります。もし、あなたが私に迷惑をかけたと感じているのならば、誠意をもってお詫びをしなければいけません。そのためには、メールではなく電話で直接お詫びをする方が「誠意ある」と感じられるのでは・・・?お客様相談室の従事者の応対向上を目指している私ですので、一言、ご注意を与えます。嫌味に感じたら申し訳ないです。他意は全くありません。分かっていただければよいので返信などは不要です」とメールで送った。
案の定、その後は何の連絡もない。
返信は不要と書いたのでその通りにしたまでの話です。返信をしたら「返信は不要だと言ったでしょう」と新たなトラブルになってしまう。でも、不要と言われても電話を入れないといけないのがクレーム対応の原則だ。2度目も注意を受けてしまったら、今回こそ挽回のチャンスだ。お客様のところに直接訪問したり、電話で今までの非礼を丁重にお詫びしたり、という応対が求められる。今回は挽回の機会を逃してしまった結果になった。「過ちは憚(はばか)ることなかれ」「ミスの挽回は誠意を倍返し」
もちろん、返信は不要と強く言われた場合は、それ以上は本当に不要かもしれない。しかし、不要と言われたからと「連絡しない」ことの方が危険度は高い。