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クレーム千夜一夜   第4夜<私はなにも、悪気があって言ったわけでは・・・>

5月のゴールデンウィークに、妻と一緒に久々に都内にある百貨店に買い物に行ってきました。バスや電車の定期券を入れる「パスケース」を買いに行ったのです。半年くらい前に私が購入した「パスケース」と同じものを買いに行ったのです。もちろん、使用方法は各自自由なのですが、私はこの「パスケース」に伸縮自在のチェーンを取り付けて、チェーンの先に付いている小さなフックをパンツのベルト通しにつなげて使用しているのです。チェーンが付いているので紛失しにくいし、伸縮が自在なので、パンツのポケットから取り出しやすいのです。私が自慢げに見せるものですので私の妻も「ぜひ欲しい」と言いだし買いに行ったということなのです。これが噂の「パスケース」

百貨店の紳士雑貨売場に行くと「パスケース」がありました。私が買ったものと同じものが数色並んで陳列されていました。ちょっとデザインが違うものも並んでいます。私は黒を買ったのですが、たしかオレンジ色のものがあったので妻に言うと「オレンジ色がいい」と意見が合いました。ところが肝心のオレンジ色の「パスケース」は残念ながら陳列されていませんでした。回りを探してもありません。違うデザインではオレンジ色はありますが、妻は同じデザインが良いというので何度も探したのですが見つけることができませんでしたので販売員を呼びました。それほど混んでいなかったので、もっと私たちのことに注意を払ってくれても良いのに、と思いながら呼びかけると、「いらっしゃいませ」と応じてくれました。「たしか、このデザインでオレンジ色があったはずなのですが、買いたいのですがありますか?」と私が言うと、面白い言葉が返って来ました。

さあ皆さん、どんな言葉が返ってきたと思いますか?



「在庫があるようでしたらございますが・・・・」

平然と丁寧に応えてくれたのです。私は思わず心の中で「えっ・・・?」と叫び妻の顔を見てしまいました。妻はすぐに感じてくれて「あんた、余計なことを言ってはだめですよ!」という表情で私の顔を睨んでいました。

私は心を落ち着かせて、改めて「それでは在庫を確認していただけますか?」とお願いすると、その販売員は何事もなかったかのように「はい、かしこまりました」と言って在庫を調べに行ったのです。最終的にはオレンジ色があり無事に購入できたので妻も喜んでいました。

さて、この販売員はどういうつもりで「在庫があるようでしたらございますが・・・」と返したのでしょうか?

いくつかを推測してみましょう。


(1)このデザインそのものにオレンジ色のものがあるかどうかを私は知らないのですよ。だって私の売場は、商品数が多いし、一点一点すべて覚えなさい、だなんてそんなことは出来ませんよ。

(2)オレンジ色のものがあることは知っていますが、在庫としてあるかどうか、今私に聞かれても知りませんよ。在庫の確認だって結構時間がかかるんですよ。

(3)オレンジ色のものがあるかを、ストック場まで確認にしに行くのは面倒ですね。私だって忙しいんですよ。販売員も少なくなっているし・・・。他の色を選ぶか、違うデザインのオレンジ色を選べばよいのでは?お買い物は効率よくお願いします。

(4)えっ?私、何か問題がある発言をいたしましたでしょうか?そうでしたらお詫び申し上げます。すみません。


いろいろ考えられると思います。しかし、オレンジ色の「パスケース」を買いたいというお客様が目の前にいるのです。私が販売員だったら、すぐに在庫があるかを確認して、あれば買っていただくし、なければ何とかよその店から融通してもらい、後日になってしまうかもしれませんが買っていただけるようにお話をすると思うのですが、皆さんはどのようにお考えでしょうか?

この販売員は、素晴らしい人間性を持っている方であり、たまたまこのような回答をしてしまったということもあり得ます。だから、一事が万事で判断してはいけません。とはいうものの、こういう場面に遭遇した場合、大半のお客様は許して下さり何もなかったように振る舞っていただけるのでしょうが、中には「何をこの販売員は馬鹿なことを言っているんだ。在庫があるならあるだって?そんなのは当たり前じゃないか。そんな当たり前のことを私は聞いているのではない、今在庫があるかどうかを聞いているのだ。あるのか?ないのか?どっちなんだ。私を馬鹿にしているのか」と立腹する方もいらっしゃるのでしょうね。これが「クレーム」なんですよね。大変の方は許してくださるし、許さないにしても何事もなかったかのようにお帰りになり、その結果、この店を信用しなくなってしまう。結局、この店から離反してしまうのでしょうね。

相変わらず、「本人は悪気がなかった」ということで済ませてしまうのでしょうね。販売員の何気ない言動でお客様に怒りを与える販売員が少なからずいるし、そのことにあまり関心を持っていない管理監督者がまだまだいるんでしょうね、と考えさせる出来事でした。

2012.05.25
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