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クレーム千夜一夜 < 第57話 「自分が恥ずかしい・・・」の話 >

近所の小さなスーパーでの出来事です。そこにはレジが2つあります。その一つに並んでいたときに、隣のレジから騒がしい声が聞こえてきました。既に数点の商品の登録をし終わっているのに、80代半ばの母親と50代の娘がレジの前で言い争いをしているのです。「お母さん、これは冷蔵庫にいくつもあるじゃないの」すると母親の声「それは何とか、かんとかなのよ」さらに娘が「こっちのだって、3つも要らないじゃないの」母親は「いや、これは何とか、かんとかで必要なのよ」親子の後ろには待ち人が1人。レジスタッフは困っている様子も見せず親子のやりとりを優しそうな眼差しで見ています。これを見ていた私は優しくなんてなれません。隣のレジだったので被害を受けていない私ですが、心の中では「何だよこの親子、常識が無いなあ。選び直すのなら一旦レジを中止して貰って別な場所で考え直せば良いのに。次の順番待ちの人は気の毒に」「全く常識が無い親子だ」と『怒り心頭』でした。清算が終った私は、購入品を買物袋に入れ終って帰る準備をしていました。でも、どうも親子が気になります。見ると商品入力のレジが終了し、2メートル先の入金用のレジに移っていました。しかし、入金操作の方法が分らず悪戦苦闘しているのです。「やり方が分らない。どうやるの?」という親子の苛立ちの声が再び聞こえてきました。『一人憤慨』の私は心では「いい気味だ」「少し苦しめばいい、常識の無い親子なんだから」と相変わらずでした。するとどうでしょう、先ほどのレジの女性スタッフが急ぎやってきて、笑みを浮かべながら優しく親切に教えているのです。決して大げさな表現ではありません。まるで、天使のようなスタッフだと感じてしまいました。それに比べて、お年寄りが困っているのに手を差し伸べようともせずに、勝手に『一人憤慨』をしていた自分が、なんと『独りよがり』の『器の小さな人間』なんだろう、「悍ましい」とはこんなことを言うんだろうな、と恥ずかしさを感じながらそそくさと家路についた私でした。

2024.08.28
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