明るく元気で、楽しい研修・講演

新着情報

クレーム千夜一夜  < 第71話   「「正直な高齢者」の話 >

昔からの知合いに86歳になる男性Aさんがいます。数年前に奥さまが他界されお一人で生活しているのです。親しいのでお土産や「おかず」のやり取りをする仲です。とても素晴らしい人なのですが、一つだけ難点があります。「おかず」をいただく際にたまにですが「え~っ?」となるときがあります。例えば、少し前のことです。「健ちゃん(私のことです)、南京豆を食べる?」と電話が来ました。「もちろん食べますよ、今、いただきに上がりますから」と切電してAさん宅に参りました。Aさん「あのさあ、この南京豆を貰ったんだけど、不味くて食べられないんだよ。健ちゃん、食べる?」と言うのです。電話で「食べますよ」と言った手前、私には断る勇気はありません。不味い南京豆を仕方がなく貰ってくることになります。つい、先日も「健ちゃん、春巻きと中華惣菜を貰ったんだけど食べる?私一人では多すぎるんだよ。B駅東口のC百貨店で買ったんだって」と電話が来ました。B駅東口のC百貨店なら間違いないと咄嗟に思い「もちろん、いただきます」とAさん宅を訪れました。ピンポーン、扉が開きAさんが出てきました。「B駅東口のC百貨店の中華惣菜なんだけど、食べきれないんだよ。しかも、あまり美味しくないんだよ。悪いけど食べてくれる?」Aさんの好意なので断ることができない私は「B駅東口のC百貨店の惣菜なら美味しいはずですよ」とお世辞を言いながらいただくことになってしまいました。我が家まで3分の道のりがとても長く感じました。断れない自分を棚に置いて、自分が美味しくないと感じたものを他人にあげるなよ。奥ゆかしく「お口に合わないかもしれませんが」というのはまだ許せますが、本当に不味いものを寄越すなよ。とはいえ、「不味い」と正直に言っているし、不味くても無駄にしたらいけないという時代に育ったAさんだから、その気持ちに乗ってあげてもいいのかな?まあ、貰って捨てればいいんだから。

それにしても、B駅東口のC百貨店の中華惣菜は本当に不味くて一口食べて捨ててしまいました。「不味かったら他人にあげてはダメだよなぁ」とひとり言をつぶやいていた私でした。

2025.05.08
カテゴリー:新着情報
ページの先頭へ