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クレーム千夜一夜   第3夜<頑張っている私>


急きょ、Y銀行に口座を設定しなくてはならないことになり、先日の午前中にその手続きにY銀行に行ってきました。ちょっと遠方の仕事に行く途中に寄ったのです。30分も時間があれば手続きが終わるだろうと安易に考え、電車に乗る時刻の30分前にY銀行に到着し窓口で手続きをしてもらいました。



ところが、20分経っても出来上がらないのです。電車が発車する時刻まであと10分しかないので気になりだして窓口の担当者に声をかけました。「電車の時間が10分後なんだけど、あと7~8分で終わりそう?」

「できます。」という回答が来れば、安心して待っていよう。「何とも言えないのですが難しそうですね。」という回答であれば、明日の午前中は時間があるから明日にしよう、と考えての質問でした。

担当者は40歳前後の女性でした。この担当者から出た言葉は次のようでした。

「あと7~8分ですか?一所懸命頑張ってみます。」


力強く聞こえる何と上手な答え方なのでしょう。確実に約束できるかどうか分からない中で、お客様の勢いに押されて「出来ます」などという無責任な答えではなく、かといって、「出来ません。」という期待を裏切るような消極的な回答でもない。私の質問に直接応えているわけではないのに「一所懸命頑張ってみます。」という気迫を感じさせる回答。私は「あ、頑張ってくれるんだ」というなぜか安心感を抱き、それ以上は何も言えずにじっと待っていたのでした。


数分後に私の名前が呼ばれ、ぎりぎりの時間でしたが新しい通帳をもらい、パスワードを登録し、何とか電車の時刻には間に合った、という出来事でした。


何かサービスを受けたり、クレームの応対をしてもらったりして「いい気分になる、嫌な気分になる」「満足する、不満だった」という感情はいずれも相手側の気持ちの問題であり、サービスやクレーム応対を受ける側の心の問題です。だから、今回の銀行の担当者の言葉に「ふんふん、なるほど」と感じる人もいれば、「何だよ、間に合うかどうかを聞いているのに、一所懸命頑張る、というのは回答になっていない。頑張るのは当然じゃないか!」と怒る人がいても何ら不思議なことではありません。サービスにせよ、クレームにせよ、人によって感じ方が違うのですから。同じ事象を同じ人が体験したとしても、満足する場合とそうではない場合とがあるのですから。


でも、私は今回の対応に満足感を味わいました。一所懸命頑張ってくれるんですもの、それ以上は言えませんよ。リスキーな質問を受け、確実な回答を約束できない中で、担当者は瞬時に状況を判断しその場に最適な言葉を返したのでしょう。


クレーム応対に限らず、接客業に携わっている人たちには、この臨機応変の応対、機転の利く応酬話法が求められます。接客業にとっては必須の条件なのでしょうね。接客業に限りません、人間関係が伴うところにはすべて求められる資質かもしれません。やはり日常からのトレーニングが必要ですね。よくあり得るケースを想定してその返し方を考える。その返し方を一表にしておき、時間があれば反復練習をする。そういうトレーニングが欠かせません。いずれにしても、相手の気持ちがどういうものかを常日頃から感じ取ろうという前向きな姿勢が功を奏すのでしょうね。

私も「頑張ってみます。」

2012.03.26
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