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クレーム千夜一夜<第38話 同じ穴のムジナ>

自民党の国会議員の勉強会『きさらぎ会』で6/6(月)、日銀の黒田総裁が【金融政策の考え方】をテーマに講演いたしました。その発言内容の一部が世間の常識とかけ離れているということでとうとう謝罪に追い込まれることになりました。

このことを私が知ったのは6/7(火)の朝刊を読んだときです。記事には【黒田総裁の発言に「家計の値上げ許容度も高まってきている」】と書かれていました。このときは「え~っ?許容度が高まっている?値上げを許す人などいるの?」と不思議に思いました。さらに「値上げ許容度」なんていう難しい単語があるんだ?専門家というものは、内容そのものよりも、難しい横文字や聞き慣れない単語を多用することで、講演会そのものがとてもグレードが高い、知識レベル・ステータスが非常に高い、価値ある内容だと受講者たちに大きな勘違いをさせることがよくあるからなあ・・・と頭に浮かんだものでした。

黒田総裁の発言に、世間は「常識外れ。多額の給与を貰っている人だから国民の生活実情を知らないことから来ている」と素早く、大きく反応しました。

その後の報道によると、結局、6/7(火)の発言後、記者会見で「100%正しかったかと言われると若干ためらうところがあります」とトーンダウンしてしまいました。さらにその夕方には「誤解を招いた表現だったということで申し訳ないと思っております」とさらにトーンが下がってしまいました。そして、とうとう6/8(木)の衆院財務金融委員会では、「家計が値上げを受け容れているという表現は全く適切でなかったということで撤回いたします」と謝罪することになりました。

政治家や高級官僚たちの謝罪とは得てしてこういうのが多くなります。最初に『謙虚に・丁重に謝罪』していれば済むことが多いのに、ミスを認めたくないのか、出し惜しみをしてしまいます。最初は高を括って(空気を読めないだけです)、「そういう主旨で申し上げたのではありません。全体の文脈を読んでいただければ理解していただけると思います」ということで済ましてしまいます。ところがそうはいきません。すると「遺憾に思います」「そう感じる人がいるのならお詫びします」とややお詫びに近くなります。でも、そう感じる人がたくさんいるから問題になっているのでしょう。「いたとしたら」ではありません「いる」んですから。結局、追い込まれて「申し訳ございません。発言を撤回いたします」と謝罪発言につながってしまうのです。しかし、これだって『覆水盆に返らず』です。一度、責任のある人が自分で考え信じていることを発言したのです。撤回しても元に戻るものではありません。

今回のことは、日銀総裁が世間の空気を読めなかったという結果なのでしょう。そりゃそうでしょう、国民は『値上げを許そう』などとは思っていませんし、むしろ、心の中ではやるせない不満感で溢れかえっているのです。「この気持ちをどこにぶつけたらいいんですか!」と値上げに抗えないどうしようもない不満を感じているのです。

それにしても、マスコミから突き上げられると、講演では『値上げ許容度』と発言していた黒田総裁は「家計が値上げを受け容れているわけではなく・・・」という平易な表現に変わっているのが気になります。

6/6の講演会で「家計が値上げを受け容れても良い、と考える人が増加している」という表現をしていれば、ほとんどの受講者である自民党の国会議員さんたちはすぐに気付くはずです。『発言は国民の常識とは乖離している、違う』と認識するはずです。それとも、『値上げ許容度が高まる』なんていう難しい単語を持ち出すことで、受講者である自民党の国会議員さんたちを煙に巻こうとしたのかしら?

考えてみれば『きさらぎ会』の国会議員さんたちは、発言を聞いた時にどうして黒田総裁に異議を申し立てなかったのかしら?その場ではなかなか発言できないというのなら、今からでも遅くありませんよ。「日銀総裁としてはあまりにも軽率で非常識な発言だった」くらい発言する自民党国会議員がもっともっと出て来てもいいのでは・・・?

やっぱり、黒田総裁と同じような発想で「値上げは仕方が無い」「このくらいの値上げだったら国民は付いてくるし何とかなるだろう」と感じている『同じ穴のムジナ』ばかりなのでしょうかね?この日本を自民党に任せていても大丈夫なのかしら・・・?

2022.06.09
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