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クレーム千夜一夜 <第21夜 仁義なき戦い>
元号が「平成」から「令和」となり3日目となりました。「平成」という名称も31年前には聞き慣れない響きでしたが、やはり30年以上も「平成」を使っているといつの間にか馴染んでしまったようです。ということは、「令和」も今に普通に聞こえるようになるのでしょう。
本日のクレーム千夜一夜は、この「令和」になる直前の話です。
私は何が嫌いといって、カラスほど嫌いなものはありません。朝、外出するときに、近所のごみの集積場に数羽のカラスがゴミをあさっている姿をよく見かけるのです。私の妻や近所の主婦の皆さんはゴミが飛ばないようにネットで覆ったり、散らからないようにときれいに清掃したりして「ごみの集積場」を守っているのです。それが、人間がいなくなるのを狙うがごとくごみをあさりに来るのがカラスなのです。散々食べ散らかして飛んで行ってしまうのです。折角きれいになっていたごみ集積場が汚くなってしまうのにあまり時間を必要としません。結局、周辺はゴミが散らかってしまうのです。
仕方がないでしょう、この地球は人間だけのものではないのですから・・・。カラスにだってこの地球に住む権利がありますよ。生きるためには餌を探しに来るのは当然のことです、と頭では理解しているのですが、外出時に「ごみの集積場」でカラスを見かけると「ワァ~!」と脅かしてしまう私の本能は、誰も止められません。私の妻の仇、ご近所の主婦の皆さんの仇がごとく、カラスを脅かすことが私の使命なのですから。ということは、カラスの世界も私を敵対視しているはずです。多分、私の顔が「指名手配」として広まっていることでしょう。「この男を見かけたら、攻撃せよ」と。
私の妻は「あなた、カラスを脅すのはよしなさいよ。カラスは頭が良いから、あなたの顔を覚えていて、何か悪さをするかもしれないわよ」と注意をしてくれるのですが、それにしても私の血が騒いでしまうのです。
つい先日も、外出時に、いつもの通り「ごみの集積場」にいたカラス数羽に「ワァ~!」と脅かして逃げ去るカラスを見届けてました。「どうだ!」とばかり勝利感を味わい、意気揚々とした気分で歩き続けて目的の駅に向かいました。ところが、ほんの10分も歩いたでしょうか、別の地域のごみの集積場にもカラス数羽がゴミをあさっていたのでした。もちろん、私の闘争心を掻き立てたことは言うまでもありません。「ワァ~!」と叫ぶために一歩前に出ようとしたその瞬間でした。上から「ピシャ!」と何か水滴のようなものが頭の左上に落ちてきたのを感じたのでした。思わず上を見ると、カラスが3~4羽が「かぁ~かぁ~」と飛んでいくではないですか。どのカラスか分かりませんでしたが、水滴はカラスの糞であることはすぐに分かりました。慌ててハンカチで、臭う黄色の水分をふき取りましたが簡単にはふき取れませんでした。何度拭いてもハンカチには黄色に」汚れました。家に戻っている時間はありません。黄色の水分をつけたまま駅まで急ぎました。駅のトイレで頭を洗って黄色の水分を落とした私でした。トイレの水道で洗ったので頭は“ボサボサ”、ハンカチはびしょびしょ、そんなみじめな姿で仕事に向かった私でした。事情を知った仕事先の担当者からは同情されてしまいました。その時でした、悔しさ、恥ずかしさで一杯だった私のこころ中は、あらたに復讐に燃える気持ちが暗雲のように広がっていくのを感じたのでした。「よしっ、戦争だ!」とこの後の「カラスとの仁義なき戦い」を誓った私でした。