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クレーム千夜一夜 <第11夜 過剰な企業防衛姿勢>

私の女房は化粧品を通信販売で購入している。

先日、自宅に届いた化粧品に「シール」が付いていて、24桁の番号が書かれていた。“この24桁の番号をこの会社のホームページで入力すると、もれなく記念品を贈呈”と記されていた。

私が仕事に熱中している最中に女房がやってきて、「無料で記念品をくれるようなので、この会社のホームページからこの番号を入力して申し込んで欲しい」とシールを置いていった。

仕事に熱中していたときだったので「後で申し込んでおくからね」と応えて再度仕事に戻りそのまま頼まれたことを忘れてしまった。

 後日、引き出しの中に女房からの依頼のシールを見つけたので慌てて化粧品会社のホームページを開けて、間違えないように丁寧にシールの番号を入力してみた。しかし、何度やってみても「エラー」になってしまう。電話して問合せするしかないなと考え、この化粧品会社に電話をしてみた。

 

 女性スタッフが出て丁寧な口調で自社名と自分の名前を名乗ってくれた。私も自分の名前を告げて、さらに、記念品がもらえるキャンペーンのことを説明し、私のパソコンでホームページ上に24桁の番号を入力しても「エラー」になってしまうことを女性スタッフに負けないくらい丁寧に伝えた。「入力の仕方が違うんですかね?入力の方法を教えていただけますか?」と続けて伝えた。

女性スタッフは間髪を入れず、「川合様、恐れ入りますが会員番号は何番でしょうか?」と尋ねてきた。

えっ?会員番号?女房から会員番号を知らされていなかった私は「いやあ、会員番号はちょっと分からないんですよ。女房から頼まれたもので・・・」と告げた。

すると女性スタッフは「大変申し訳ございません、会員番号を教えていただけないと、この先に進めないんですよ。会員番号を確認してから改めて電話をいただけますか?」と何ら躊躇もしない様子で回答してきた。

「えーっ?会員番号が分からないと回答ができないの?入力方法を教えていただくだけなんですよ。どうして会員番号が必要なの?」あまりに驚いた回答だったので突っ込んで質問をしてみた。

「申し訳ございません。会員番号がないと回答できませんので・・・・」と女性スタッフ。

「個人情報を教えていただくわけでもないし、キャンペーンの申し込み方法を教えていただくのに会員番号はあまり関係ないのでは・・・」とさらに食い下がってみたのだが「鉄壁の守り」を崩せない。仕方がなく私は「それじゃあ、貴女ではなく貴女の上司に代わってください。その人と再度話をしますから・・・」と半ば私も引けなくなってしまい伝えると、「それではこちらから掛け直しをいたしますので・・・」と私の電話番号を尋ねてきた。「会員番号がないとお教えできません」と言ってやろうかな、と意地悪な気持ちを抑えて電話番号を教えた。

数分後に上司と思われる女性から電話があった。

「川合様のお宅ですか?このたびはご迷惑をおかけしております。キャンペーンのお申し込みについてのお問合せですね。」

「さすがに上司は話が速い」と感じた私は「そうなんですよ。いくら入力をしてもエラーになってしまうんですよ」とすがる気持ちで伝えた。

するとまたもや信じられない言葉が返ってきた。「恐れ入りますが会員番号を教えていただけますか?」

えーっ?先ほどから分からないことを伝えているのに、この上司は聞いていないのかな?と考えながらも「今は分からないんですよ。女房が帰ってきたら分かるのですが・・・」と伝えると

「会員番号が分からない方には何もお応えできないんですよ。」

目が点。頭も真っ白。これ以上は時間の無駄と感じた私は「それじゃあ結構です」と力なく電話を切ったのだった。

 

 あまりに過剰な企業防衛意識。

確かに正体不明な人に個人情報やそれに近い情報を伝えることはできないのは分かっている。だからこそ会員番号があることも理解している。

しかし、自社のキャンペーンの入力方法を教えることは個人情報とは関係ないことだ。簡単に情報を流してしまうと「何かあったときに自社に責任がかかってしまうかも・・・」とばかり、企業防衛の姿勢が過剰に働いてしまうと今回のようになってしまうのだろう。

 

 これは女性スタッフが悪いのではない。このような回答をしている現場の実態を把握していない会社組織の問題だろう。

「現場百回」「事件は現場で起きている」、

常に現場を重視することはマネジメントでは最も大切なことの一つだろう。

2014.05.29
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